相続に伴う登記手続きを行うかどうかは特に法律で義務とされていません。
よくご相談にこられた方のお話を聞くと、近所の方々も特にしていない等の理由で
両親や祖父母の名義のままでいらっしゃることが多いように感じます。
登記手続きを放置しておくことのデメリットは、いざ不動産につき何かしようとする際に、
名義が亡くなった方のままでは売却や贈与等ができませんので、現在の所有者名義に変更しないと
いけません。
また、今後も特に不動産の処分などを予定していないので、名義変更の必要性を感じないという方もいらっしゃるかもしれません。
ここで、気を付けなければならない点が、たとえば祖父名義であって、その子供である親が相続し、
親の相続により自分が取得したので、権利は自分にあると認識している場合に、
祖父母名義を自己に名義変更しようとすると、法務局に登記手続きを行う際は書面での提供が必要となります。祖父母の相続人全員の署名押印・印鑑証明書や、親の相続人全員の署名押印・印鑑証明書が必要になります。相続が何代にもわたっていると、書類を集めるのに時間も費用も掛かってしまいます。
また、近年空き家の問題が話題となることがありますが、実際少し住宅地を歩いてみると、空き家だろうという不動産を結構見かけます。
空き家問題の大きな問題の一つに、所有者の把握ができないという点があります。
親が亡くなって、相続人である兄弟の間では、だれがその両親の自宅を管理していくのかを話し合っているかもしれませんが、第三者(役所)等が、その不動産の所有者がだれかを調べる際には、不動産の登記簿謄本を確認しますので、そこには亡くなった親の名前が記載されていて、現在の所有者が把握できないことになります。
実際には、兄弟の間で話し合いがついていなくて誰が管理していくのか話し合いが進んでいないとかもあり得ると思います。
ただ、田畑も山林も住宅も、放置されると時間がたてばたつほど手が付けられなくなりますので、
できるときにしっかり自分の権利を登記に反映していただくべきだと考えます。
相続については、とてもデリケートな事ですので、
当然司法書士の職務として守秘義務がありますが、
依頼者の方々にご安心していただけるように、より一層の秘密厳守を心掛けています。
そして、登記手続きは面倒と感じられても、ご自身の大切な権利の保護や公示の手続きであることを
認識していただけるように、より親身な説明を行うことと迅速に対応することを心掛けております。
一般的な基本内容を記載させていただいておりますので、個別の事案では異なる場合がございます。
相続は人の死亡によって開始することが原則です(民法882条)。
死亡した人を「被相続人」と呼びます。
自然死亡だけでなく、①失踪宣告や②認定死亡により相続が開始することもあります。
死亡の時期は、戸籍簿に年月日時分が記載され、法的に確定します。
失踪宣告には、普通失踪民法30条1項と特別失踪同条2項があります。
普通失踪は、不在者の生死が7年間明らかでない場合に、その7年間の満了した時に
失踪宣告を受けた人は死亡したものとみなされます。
そして、不在者の身分上や財産上の法律関係を清算する制度です。
特別失踪は、戦争や船舶が沈没した場合等の危難が去った後
1年間生死が明らかでない場合死亡したものとみなされます。
認定死亡とは、官公署の死亡認定に基づく死亡のことをいいます。
例えば、火災・水難・震災等により死亡したことが確実であっても、
遺体が発見されない場合に官公署の死亡報告に基づき戸籍簿への記載される方法です。
同時死亡の推定をうける場合は、推定を受ける人相互の間では相続が生じません。
例えば、事故などで家族が死亡し、誰が先に死亡したのかわからない場合等です。
ポイント 相続登記の実務では、過去の最高齢からみて、年齢が120歳を
はるかに超えている場合などは、生存の調査等は行われていないようです。
・相続の開始場所は
相続において紛争が生じた場合に、訴えを提起する裁判所がどこなのか等で関係してきます。
相続は、被相続人の住所において開始します。
被相続人が亡くなった場所は関係ありません。
相続については、民法の第4編と第5編に親族、相続の条文があります。
実際は相続に関して様々な問題があり、条文にはない法律の解釈が裁判所の判例で
加えられているなど、条文以外にも確認が必要になります。
相続登記とは不動産の所有者(登記名義人)が亡くなった場合に、
その不動産の名義を相続人に変更する手続きです。
プラスの財産(預貯金や不動産)だけでなく、マイナスの財産(借金等)も相続の対象となります。
被相続人でないと責任が果たせない義務などは、「被相続人の一身に専属したもの」にあたり引き継がなくてもいい債務にあたります。
ポイント
相続財産がマイナスがはるかに多いような場合には、相続権そのものを放棄する「相続放棄」ができます。
相続財産がプラスかマイナスかわからない場合や、マイナスが多そうな場合は、相続する財産の範囲で債務を弁済する「限定承認」という方法があります。
どちらも、相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てをしなければならない点に注意です。
相続登記をいつまでにしなければならないという決まりは特にありません。
※ただし、放置しておくと、いざ、どなたかの名義にしようとした場合に、相続関係が複雑になりますので、費用も手間もかかることになります。
※亡くなった方名義のままでは、売却や贈与による所有権移転登記や担保設定・担保抹消の登記などはできませんので、必ず相続登記が必要となります。
相続が開始して、相続登記をせずにそのままにしておいた場合、その相続人について第二の相続が開始すると、その相続人について相続関係が発生しますので相続人の数が増えてしまい、いざ売却の前提として相続登記をしようとすると、相続人全員で話し合いを行わないといけませんので、連絡をする・書類を準備するだけでも多大な時間・労力がかかることになります。
相続人とは、人が亡くなった場合に、その人の財産を承継する(ものと法律で定められた)人です。
人が亡くなって相続が発生した場合、亡くなった方を「被相続人」、法律上相続する権利のある人を「法定相続人」または、単に「相続人」といいます。法定相続人及び相続する割合は、民法によって定められています。
法定相続人
第一順位 (配偶者と)子
第二順位 (配偶者と)祖父母
第三順位 (配偶者と)兄弟姉妹
配偶者は、常に法定相続人となります。
配偶者とは、法律上婚姻関係にある人ですので、内縁の妻は法定相続人にはなりません。
法定相続人以外に、相続財産を承継することができる人に、
・受遺者(遺言によって財産を承継する人と指定された人)
・特別縁故者(法定相続人や受遺者がいない場合に、家庭裁判所に特別の縁故があった者として認められた人)
がいます。
被相続人の子(第一順位)が、被相続人の死亡が開始した時より前に、すでにお亡くなりになっている場合は、孫(第一順位の子の子)が法定相続人となります。
この時、孫もすでに亡くなっている場合はひ孫(孫の子)が法定相続人となります。
兄弟姉妹(第三順位)が相続人となる場合に、兄弟姉妹が被相続人の死亡開始より前にお亡くなりになっている場合も、甥姪(兄弟姉妹の子)が法定相続人となります。
この時、甥姪もすでに亡くなっている場合は、上記の場合と異なり甥姪の子は法定相続人になりません。(但し、昭和55年12月31日以前に開始した相続は、甥姪の子も法定相続人となります。)
法律により定められた相続できる割合が法定相続分です。
相続人全員の合意により、遺産分割協議を行い相続分を変更することはできます。
相続の開始が昭和56年1月1日までと以降により法定相続分は異なります。
昭和57年1月1日以降に相続開始
第一順位 配偶者2分の1 子2分の1
第二順位 配偶者3分の2 父母3分の1
第三順位 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1
配偶者がいない場合は順位に従って、子・父母・兄弟姉妹が相続することになります。
被相続人と相続人に関係する戸籍謄本等を集めて、
相続人が誰なのかを証明する書類を収集していきます。
わざわざ調査をしなくても、相続人は誰なのかを
把握しているということはあります。
しかし、不動産の名義変更の登記手続きや遺産分割後に預貯金を引き出す手続きを
行う場合には、手続きの相手方に書類上わかるようにしておく必要があります。
そのために、把握をしているからといって戸籍謄本等の
書類の収集が不要ということありません。
大まかなスケジュールは以下のとおりになります。
・相続税の納付と申告が必要になる場合には、相続の開始を知った日の翌日から10月以内までに申告と納付の手続を行わなければなりません。
・相続開始から
3カ月以内に相続するかどうかの意思決定
①相続人の確定作業 ②相続財産・債務の把握 ③相続放棄、限定承認の検討
4カ月以内に所得税の準確定申告の手続
亡くなった方が、死亡年の1月1日から死亡日までの確定申告を行う必要が
ある場合、または死亡年以前について確定申告を行わないまま亡くなった場合
10カ月以内には、相続財産の把握や遺産分割協議
当事務所では、各専門家の先生とも連携をとり対応させていただきます。
①相続人と相続財産の調査を行い、相続人及び相続財産の範囲を確定させます。
②遺言書があれば、それに従って遺産分割を行います。
遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行い、
遺産分割協議書を作成して、それに従って遺産分割を行います。
③相続人間で協議がまとまらなければ、裁判所を通じて、遺産分割調停、
調停でまとまらなければ遺産分割の審判を行い、
誰がどの相続財産を相続するのかを決めることになります。